【ボルボ V90試乗】走りもデザインも、強力なドイツ勢と肩を並べるトップワゴン

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自動車メディアにかかわる人が、ボルボ車をして“オルタナティブ”と呼ぶことがあります。いうまもでなく、ドイツ御三家(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)の“代案”という意味です。

ジャーマンプレミアムカーが欲しいけれど、価格的にちょっと手を出しにくい。そんな人がボルボに目を向ける、ということもありますが、もっと積極的に“オルタナティブ”として、ボルボを選ぶユーザーも多いのです。何はともあれ、アグレッシブなドイツ車に少々疲れて、よりリラックスしたクルマとして、北欧のプレミアムブランドを求める…。

そんなオルタナティブブランドとしてボルボの立ち位置が確立されたのは、ボルボ入魂のFF(前輪駆動)モデル「850シリーズ」がわが国でも人気を博した頃からでしょうか(もう四半世紀も前のことなんですね!)。希代のヒット作たる850シリーズは、その後「70シリーズ」に移行し、またハンサムな4ドアクーペ「60シリーズ」が加わって、スカンジナビアの自動車メーカーは、ドイツ勢に対抗することになります。

ただし、そんなボルボがジャーマンブランドのオルタナティブたりえるのは、実はミドルクラスまで。その上の車種となると、正直、影が薄い。大柄で、優しくて、包容力はあるけれど、おつきあいはちょっと…と感じるユーザーが多かったようです。

こうしたボルボの“ガラスの天井”を突き破ったのが、同社初のSUV「XC90」でした。「エココンシャスなイメージが強いボルボが、ついに環境に優しいとはいいかねるSUVに手を出したか!」とショックを受けた人もいたようですが(←ワタシです)、その後の快進撃は、皆さまご存じのとおり。

そして昨2016年、今やボルボのイメージリーダーといっても過言でないXC90がフルモデルチェンジを受け、よりビッグになって、シンプル&モダンなデザインをまとって、そして前モデルよりプレミアムになって、つまりお値段がお高くなって登場したことは、すでにご報告済みです。

そんな、2世代目XC90のローンチからほぼ1年遅れで、90シリーズの他のモデルが日本でも発売されました。セダンの「S90」、ワゴンの「V90」、そしてクロスオーバーの「V90クロスカントリー」です。ここでは「V90 T6 AWD インスクリプションの第一印象をご報告します。

新しいV90を目にした時、ちょっとクルマに詳しい人なら「オッ!」と思うことでしょう。クールでスタイリッシュな外観は元より、記憶の奥から引っ張り出される車名があるはず。そう、ペール・ペターソンの手になる1960年代のハンサムカー、ボルボ「P1800」です!

「いや、V90なら『1800ES』じゃないか!?」と突っ込んだアナタ、正解です。P1800のワゴンボディですね。残念ながら1800ESを特徴付ける近未来的なガラスハッチは、21世紀のV90には採用されませんでしたが、それはともかく、新しいS90/V90のグリルまわりのデザイン処理は、P1800、1800ESへのオマージュそのもの。モダンなボディスタイルの中に、ヘリテージデザインを上手に溶け込ませています。

でも、両車が1960年代の佳作を連想させるのは、そうしたディテール処理のためだけではないのです。新しいトップ・オブ・ボルボから少し離れて、目を細めて、ひとつの塊としてクルマを眺めてみると…、ノーズが長い! ニューモデルが「やけにりゅうとしてるな」と感じる理由が、コレです。フロントタイヤと前ドア間の寸法が長く採られ、あたかもエンジンを縦置きしたFR(後輪駆動)モデルのようなプロポーションになっています。

XC90を含む90シリーズは、新世代プラットフォーム“スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー(SPA)”を採用し、フロントに4気筒の“DRIVE-E”エンジン(とトランスミッション)を横置きし、前輪を駆動させるのが基本的な構造です。AWDこと4駆モデルもFFベースです。

スペース効率を考えると、今回のFRルックより、かつてのキャブフォワード(エンジンルームを最小にし、キャビンを前進させて車内空間を大きくとる)スタイルの方が理に適っています。でも、アッパーミドルクラスともなると“実用”を超えた“風格”が必要になる、とボルボの開発陣は判断したのでしょう。FRプロポーションを持つFFベースのクルマがどのように評価されるのか? いよいよアッパーミドルたる90シリーズも、ジャーマンプレミアムのオルタナティブたりえるのか? ボルボのユニークな挑戦に注目です。

さて、新型V90の概要を見ていきましょう。スウェーディッシュテイストあふれるエステートのボディサイズは、全長4935×全幅1890×全高1475mm。堂々とした大きさです。絶えて久しいかつてのトップワゴン「960エステート」と比較すると、全長、全幅がそれぞれ75mmと115mm上回る一方、車高は20mm低くなっています。広く、低い、スポーティなディメンションになりました。

内装は、XC90が先行して披露していたように、暖かみあるレザー、ウッドパネル類と、ハイテクの象徴たる大型ディスプレイ(メーターは12.3インチ、センターコンソールは9インチの縦型)を上手に組み合わせ、全体として瀟洒にまとめあげています。

オーディオに凝りたい人には、英国の高級スピーカーブランド“Bowers & Wilkins(バウアーズ&ウィルキンス)”のシステムがオプションで用意されます(45万円)。

エンジン、というか、パワーソースは3種類。新V90のグレードと照らし合わせていくと…。

2リッター直4ターボ(254馬力/35.7kg-m)の「V90 T5 モメンタム」(664万円)。同ターボエンジンに、さらにスーパーチャージャーを加え、スポーティに装った「V90 T6 AWD Rデザイン」(320馬力/40.8kg-m/789万円)、そのラグジュアリー版「V90 T6 AWD インスクリプション」(799万円)。2種類の過給機に電気モーター(87馬力/24.5kg-m)を加えたハイブリッドモデル「V90 T8 ツインエンジン AWD インスクリプション」(899万円/2017年9月頃デリバリー開始予定)が用意されます。トランスミッションはいずれも8AT。駆動方式はT5がFF(前輪駆動)のほか、T6、T8は4WDとなります。

足回りは、フロントがコンベンショナルなマクファーソンストラットから、ハンドリング面で有利と見なされるダブルウィッシュボーンになりました。リアはマルチリンク式。面白いのは、リアのスプリングに、先代に当たる「900シリーズ」同様、板バネを使っていることです。ボルボ製トラックに匹敵する堅牢性を確保…というよりは、スペース効率と軽量化が狙いで、グラスファイバー複合素材製のリーフスプリングを1枚、左右に渡してクッションとしています。

試乗したV90 T6 AWD インスクリプションには、オプションのエアスプリング(リアのみ)が装備されていました(20万円)。先日レポートした、通常のアシを持つ「S90 T6 AWD インスクリプション」は、想像以上にハードな、スポーティな味付けに驚かされました。

対して、エアサスペンションをおごられたV90では、入力の角が取られ、若干マイルドになっているものの、やはり姿カタチに違わぬ、硬めの、締まった乗り心地が印象的です。V90の走りからは、FRルックのエクステリアのみならず、高速走行時のスタビリティ(安定性)でも「ドイツ車にひけを取らない!」。そんな開発陣の気合いが感じられます。

ラゲッジスペースは、スタイリッシュに寝かされたDピラーの影響で、従来の「V70」よりわずかに容量を落とした560リッター。6:4の分割可倒式になったリアシートの背もたれを倒せば、1526リッターにまで拡大可能です(V70は、575〜1600リッターでした)。

テールゲートがパワー化されているのはもちろん、リアバンパー下にキーを持った人が足先を入れることでゲートをオープンさせる、ハンズフリー機能が加わりました。その上、ゲートの開閉に合わせ、荷室カバーも前後に開閉する親切設計。だてにプレミアムエステートを名乗っていませんね!

モデルチェンジに当たり、人や自転車のみならず、大型動物にもブツからない(!?)新機能“大型動物検知機能(夜間含む)”が追加され、安全装備がますます充実されました。その上“パイロット・アシスト”こと(半)自動運転を含むドライバーサポートもレベルアップしています。

内外とも、スウェーディッシュにこなれた高級感をアピールするV90。メルセデス・ベンツやBMW、はたまたアウディのアッパーミドルワゴンを検討している方! 有力なオルタナティブの登場ですよ!!

<SPECIFICATIONS>
☆T6 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4935×W1890×H1475mm
車重:2125kg(サンルーフ付き)
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC 直噴ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8AT
最高出力:320馬力/5700回転
最大トルク:40.8kg-m/2200〜5400回転
価格:799万円

(文&写真/ダン・アオキ)

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